中国留学情報

vol.054 「普通話=北京」のウソ

「発音がきれいなので北京」
「普通話を学ぶならばやっぱり北京」
「北京語を勉強するので北京」


これ、すべて間違いです。



まず知っていただきたいのは、

●中国の標準語は北京語ではない

ということです。



中国の標準語は「普通話」という人工言語です。

これに対して、北京語というのは、
正確には「北京話」といい、
北京地域での「方言」のことなんです。

特徴はer化が激しく、やたらと早口。
語彙にも若干の違いがあります。

年配の北京人が話す北京語は、
北京の若者には聞き取れないそうです。



日本人の感覚としては北京が中国の首都なので、
北京語といわれると標準語のように錯覚してしまうのですが、

例えて言うならば、
「江戸っ子のべらんめぇ口調が日本の標準語ではない」
これと同じです。




じゃぁ、本当に標準的な「普通話」、
これが話されてるのはどこかというと、

●黒龍江省ハルビン市
●吉林省長春市

だけだそうです。



私はどちらも何度も行ってますが、
確かに聞き取りやすいです。


同じ黒龍江省でもチチハルとか佳木斯とか、
ハルビンから離れた地方都市に行くと、
やっぱり巻き舌が強くなってきます。


瀋陽など東北地区の都市でもそうですね。
完全な普通話とは違う。
大連とかなかなか豪快に訛ってます。




ならば中国に留学するならば、
ハルビン、長春以外はダメなのか?


う~ん、それはちょっと違う。




まず、大学での授業。
留学生に中国語を教える教師は、
大半が標準的な普通話を話します。

また、中国の最近の大学生は、
地域によっては多少の訛りはあるものの、
みんな普通に普通話を話します。




じゃぁ、街中はどうなのか?




中国はほとんどの都市に方言があります。
上海は上海語、
広州は広東語、
成都は四川語。


で、中国の方言というのは、
日本の方言や訛りとはレベルが違います。

東京の人でも関西弁は一通り聞き取れますよね。
ですが、上海人に広東語はまったく聞き取れません。
ほとんど別の言語って感じです。



ところが、
すっごいお年寄りを除いて、
みなさん普通話は話せます。


もちろん訛ってますよ。
上海人が話すのは上海訛りの普通話です。



でもコミュニケーション自体は取れますし、
そもそも街中で地元の人と交流する機会って、
留学生活全体のほんの一部です。


平日午前中は授業ですよね。
午後は互相学習をしたり、予習復習したり。

街中に出るのって、
平日に近所で食事をする時とか、
土日に買い物に行く時とか。
やり取りも注文と道を尋ねる程度でしょ。


冷静に客観的に考えれば、
地元民とやり取りする時間って、
留学全体の1%程度だと思います。



授業中は教師が普通話
互相学習で中国人学生と普通話
訛った普通話で地元民とやり取りはほんのちょっと



わざわざ留学先を、
ハルビン、長春に限定する必要があるのか、と?




もう一つ。




中国人で完璧な普通話を話してる人って、
ほとんどいません。

中国人の9割以上は訛っている。
たぶん間違いないです。



中国語ってそれで通じる言語なんですよ。



よく、
「中国語は発音が命」
「四声を間違うとまったく通じない」
なんていう人がいますが、

これ、ありえないです。




私は中国は100都市以上見てきました。
いろんな地方の人とやり取りしてきました。



四声ボロボロの地方とかいくらでもありますよ。笑



ってか、
声調が4つない地方とかもありますから。



それでもコミュニケーションは取れるんです。



言語って単語が単独で存在しているわけではない。
文脈がありますからね。

多少訛っていても前後関係から、
どの単語かってのは決まってくるんです。



「ご飯をお橋で食べる。」


あぁ、「箸」のことだな、って分かるでしょ。



私は列車での移動が多いのですが、
車内で同席になった北京人と上海人と広州人が、
お互い訛った普通話で長々と語り合ってます。





日本人って変に完ぺき主義過ぎるところがあって。
勉強する以上は完全な発音じゃないとダメだ、みたいな。


でも言葉って使ってなんぼの実用ツールですよね。
伝われば良いわけであって。



だから、どれだけ発音がきれいな地域の大学であっても、
1クラス人数が多すぎたり、
日本語学科がなくて互相相手が見つからなかったり。

そんな大学で会話力がつかないよりは、

多少訛っていても、
会話練習が目一杯できる大学のほうが良いのではないか、と。




なにせ9割の国民が訛っているわけですから。
あえて多少訛った地域に留学して、
文脈から聞き取れなかった単語を類推する、
つまり、
訛った普通話を聞き取る力を身に付けたほうが、
実用ツールとしての中国語力は鍛えられるのではないか。


私はそんなふうにも思っています。



いずれにしても、
発音のキレイさにデリケートになりすぎる必要はゼロです。



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【今週のまとめ】
1) 北京語=標準語は間違い
2) 授業中はどこでも普通話
3) 普通話にこだわりすぎる必要はない
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